10戸、20戸のマンションに、大規模マンションと同じ管理方法は必要なのか
10戸、20戸程度の小規模マンションでも、管理会社に委託すると、100戸、200戸のマンションとよく似た管理方法になることがあります。
組合員からの連絡窓口は管理会社に一本化する。
要望はすべて書面で提出する。
役員以外の組合員から出た意見は、管理会社から理事長へ伝える。
理事会で検討し、その結果は管理会社が住民へ通知する。
これは決して間違った方法ではありません。
むしろ、大規模マンションでは必要な仕組みです。
しかしKTCでは、小規模マンションまで同じ方法で管理する必要があるのかについては、一度立ち止まって考えた方がよいと思っています。
10戸のマンションは、100戸のマンションを10分の1にしたものではありません。
人数が違えば、管理に適した仕組みも違うからです。
大規模マンションでは「人をつながないこと」が合理的になる
200戸のマンションで、区分所有者一人ひとりの事情を管理会社が個別に聞いていたら、管理業務は成り立ちません。
そのため、大規模マンションではできるだけ例外を減らします。
「問い合わせはこちらへ」
「この問題は管理会社、こちらは管理組合」
「意見は書面で」
と線を引き、誰が担当しても同じように処理できる状態を作ります。
管理会社側から見ても合理的です。
多数のマンションを管理する以上、担当者個人の力量や人間関係に頼るわけにはいきません。管理方法を標準化し、業務範囲を明確にしなければ、品質も採算も維持できません。
ここを「大手管理会社は冷たい」と批判しても、あまり意味はありません。
規模が大きくなれば、そういう管理方法が必要になるからです。
ただし、この仕組みには副作用もあります。
何かあれば管理会社へ聞く。
住民への連絡も管理会社から行う。
理事会資料も管理会社企画のものだけ。
過去の経緯もすべて管理会社だけが把握している。
この状態が長く続けば、結果として管理組合内部で情報を共有したり、区分所有者同士で問題を調整したりする必要性は薄くなります。
効率的な管理を突き詰めていった結果、管理組合内部の横のつながりが弱くなり、管理会社への依存度が高くなることはあり得ますが、
ここは大規模マンションと小規模マンションでは、合理性、効率性の問題からも分けて考えた方がよいと思います。
10戸なら、管理会社を通さない方が早いこともある
ところが10戸のマンションでは事情が異なります。
例えば駐輪場で、駐輪自転車の台数が増えて、置き方が乱れてきたとします。
大規模マンションなら、
組合員から管理会社へ連絡する。
担当者または管理員が内容を確認する。
必要なら理事長へ報告する。
理事会の議題にする。
対応方法を決める。
掲示文を作って周知する。
という処理になるでしょう。
一方、10戸のマンションなら、
「最近、自転車が増えてきましたね」
「一度整理しましょうか」
という会話で済むことがあります。
もちろん、正式な使用ルールを変更したり、費用負担を決めたりするなら管理組合としての手続きが必要です。
ここで重要なのは、制度上必要な手続きと、日常の運営まで同じにしないことです。
総会決議が必要なこと。
理事会で決めること。
管理会社へ委託すること。
住民同士の話で済むこと。
これらは、そもそも別の業務です。
小規模マンションでは、その境界を丁寧に整理することで、大規模マンションにはできない管理方法が可能になります。
KTCが現場で警戒しているのは「全部任せる」と「全部住民でやる」の両方
では、小規模マンションなら住民で管理すればよいのか。
そうは考えていません。
私たちが実際に小規模マンションを見てきて警戒するのは、両極端です。
一つは、
「管理会社に全部任せているので、自分たちは分からない」という状態。
もう一つは、
「詳しい人がいるので、その人に任せておけばよい」という状態です。
どちらも、一見すると楽です。
しかし長く続けると問題が起きます。
KTCが関わった十数戸規模のマンションでも、非常に熱心な理事長が勉強し、建物や会計についてかなり詳しくなっているケースがありました。
そのような管理組合は、その人がいる間はよく動きます。
ところが、そこで私たちが考えるのは、
「この理事長がいなくなった後も、この管理は続くのか」ということです。
能力の高い理事長をさらに働かせることが管理会社の仕事ではありません。
その人が持っている知識や判断を、次の役員でも使える形に整えておくことが大切です。
反対に、自主管理マンションで会計業務だけを外部に出していたケースでは、会計処理そのものはできても、滞納への対応、住民への連絡、役員の担い手不足などは残りました。
つまり、会計を外注すれば管理が外注されたことになるわけではありません。
建物管理も同じです。
点検会社を手配したからといって、修繕するかどうかを決める仕事までなくなるわけではありません。
管理会社に何を任せるかを考える前に、
「マンション管理には、どんな仕事が存在しているのか」を分解・整理する必要があります。
KTCでは「外に出す仕事」「中に残す仕事」「一緒に判断する仕事」に分ける
小規模マンションについて相談を受けたとき、KTCでは単純に、
「全部委託してください」とは考えません。
まず仕事の性質を見ます。
例えば、管理費等の収納、会計処理、滞納管理、法定点検の手配、専門業者との契約などは、継続性や専門性が必要です。
ここを毎年交代する役員だけで担うのは負担が大きい。
したがって外部化する合理性があります。
一方で、
「最近、廊下のここが気になる」
「駐輪場の使い方がおかしくなってきた」
「この掲示では住民に伝わらない」
といった情報は、管理会社より現地に住んでいる人の方がよく分かります。
さらに、
「この修繕を今年するのか」
「管理費を上げるのか」
「どこまで管理会社へ委託するのか」
という問題は、管理会社が勝手に決めるものではありません。
管理組合が判断する問題です。
私たちは、仕事を大まかに三つに分けます。
外部に任せた方がよい仕事。
住民側に残した方がよい仕事。
情報を整理した上で、管理組合と専門家が一緒に判断する仕事。
重要なのは、この二番目について、住民が仕事をしたから管理費が安くなった、という感覚にならないようにすることです。
例えば専門的な会計処理を高齢の会計担当役員に押し付けて、管理委託費を下げたとしても、それは持続可能な管理とはいえません。
住民に残すべきなのは、住んでいる人だからこそ持っている情報や、所有者として本来持っておくべき判断です。
作業を戻すことと、管理への関与を残すことは違います。
ここは小規模マンションの管理を考える際に、重要な違いです。
「コミュニティを作ろう」とすると、かえって失敗することがある
小規模マンションの話をすると、
「住民同士のコミュニティが大切ですね」という結論になりがちです。
しかしKTCでは、コミュニティそのものを目的にする必要はないと考えています。
交流会をしましょう。
皆で掃除をしましょう。
イベントを開催しましょう。
そう呼びかけても、人付き合いを求めていない人は参加しません。
それで構いません。
管理組合は親睦団体ではありません。
現在の国土交通省のマンション標準管理規約でも、以前存在した「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」という表現は削除されています。一方で、清掃、防災・防犯、生活ルールの調整など、建物・敷地の管理や居住環境の維持向上につながる活動については、管理組合の業務として整理されています。
この違いは重要です。
仲良くなるために管理組合運営をするのではありません。
マンションを維持するために必要なことを一緒に考えているうちに、結果として顔が分かり、話せる関係ができる。
それで十分なのです。
「コミュニティのためのコミュニティ」は続かなくても、
「自分たちの建物を維持する」という共通目的があれば、関わる理由があります。
私たちは、小規模マンションにはこの程度の「弱いつながり」がむしろ適していると考えています。
ただし、共同型管理が向かないマンションもある
ここまで読むと、「KTCは住民参加型の管理を勧めている」と受け取られるかもしれません。
しかし、それも少し違います。
例えば、
賃貸化率が高く、所有者の多くが住んでいない。
区分所有者が遠隔地にいる。
既に住民間で深刻な対立が起きている。
役員を引き受けられる人がほとんどいない。
特定の区分所有者が管理へ強く介入し、他の住民が発言できない。
こういうマンションで住民参加を増やせば、逆に管理が不安定になることがあります。
その場合には、管理会社や外部専門家が担う範囲を増やし、個人同士が直接衝突しない仕組みにした方がよいこともあります。
近年増えている外部管理者方式についても、国土交通省は選択肢そのものを否定していません。ただし、外部管理者を置いた場合でも「マンション管理の主体は区分所有者から構成される管理組合」という考え方を前提とし、管理者の業務を監督できる体制が重要だとしています。
つまり、何度も申し上げていますが、
自主管理か管理会社委託か。
住民参加か完全外注か。
このような二択が問題なのではありません。
そのマンションの人数、年齢構成、居住率、人間関係、役員の担い手、建物の状態によって、適切な配分は変わります。
小規模マンションが最初に確認したい5つのこと
10戸、20戸のマンションで管理方法を見直すなら、管理会社の見積りを取る前に、まず次の5つを確認してみてください。
一つ目は、現在、管理会社しか分からないことがどれだけあるか。
二つ目は、特定の理事長や詳しい住民しか分からないことがどれだけあるか。
三つ目は、専門家でなければできない仕事と、そうでない仕事を分けられているか。
四つ目は、住民に作業を押し付けるのではなく、住民だから持てる情報や判断を管理に生かせているか。
五つ目は、現在の仕組みを、役員が全員交代しても続けられるか。
この5つを見ると、そのマンションにとって管理会社がどこまで必要なのかが少しずつ見えてきます。
小規模マンションの最大の弱点は、戸数が少ないことです。
一戸当たりの負担は重くなり、役員も頻繁に回ってきます。
しかし同時に、人数が少ないからこそ、一人ひとりの顔が見え、情報を直接共有できるという強みもあります。
その強みまで消して、大規模マンションと同じ仕組みに合わせる必要はありません。
反対に、「小規模だから皆でやろう」と善意に依存する必要もありません。
必要な専門業務は外部化する。
所有者として必要な判断は管理組合に残す。
住民だから分かる情報は住民から吸い上げる。
そして、それらが特定の誰かに集中しないような仕組みにする。
これが、私たちが考えている小規模マンション管理の基本方針です。
管理会社の仕事は、何でも代行することだけではありません。
10戸なら10戸、20戸なら20戸で継続できる管理体制を考えることも、管理会社の重要な役割と私たちは考えています。
KTCでは、小規模マンションや自主管理マンションについて、全面委託ありきではなく、現在の管理業務を整理し、そのマンションに合った役割分担から一緒に検討しています。
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