小規模マンションで管理会社が見つからないとき、まず何を見直すべきか

「今の管理会社から値上げを求められたので、別の会社を探したが見つからない」

「何社か問い合わせたが、小規模というだけで断られた」

「自主管理を続けるのも限界だが、管理会社に引き受けてもらえない」

小規模マンションでは、このような状況が珍しくありません。

このとき、どうしても考えがちなのは、

「どの管理会社なら引き受けてくれるのか」

ということです。

もちろん、管理会社を探すこと自体は必要です。

ただ、KTCでは、その前に一度立ち止まって、

「今、このマンションでは、何を管理しなければならないのか」

を確認した方がよいと考えています。

管理会社が見つからない原因が、単に戸数の少なさや管理委託費の安さだけではないことがあるからです。

むしろ小規模マンションでは、建物、会計、滞納、過去資料、意思決定など、長年整理されてこなかった問題が重なっていることがあります。

その状態のまま管理会社を変更すると、新しい管理会社に「過去の整理」まで含めて引き受けてもらうことになります。

まず必要なのは、管理会社選びではなく、現在地の確認です。

KTCが最初に確認するのは、この7項目です

KTCで小規模マンションや自主管理マンションの相談を受ける場合、最初から管理員の勤務時間や清掃回数を細かく聞くわけではありません。

まず確認したいのは、次の5項目です。

  1. 修繕積立金はいくらあるか
  2. 管理費会計は赤字か黒字か
  3. 管理費等の長期滞納者がいるか
  4. 過去の修繕履歴をどこまで把握できているか
  5. 総会・理事会の開催状況と議事録の保管状況

これに、

  1. 築年数
  2. 戸数

を加えます。

この7項目だけで、すべてが分かるわけではありません。

しかし、次に何を確認すべきかを決めるには、かなり有効です。

例えば、築15年で修繕積立金が十分あり、滞納もなく、総会・理事会も定期的に開催されているマンションであれば、主な検討課題は日常管理の仕様や管理委託費かもしれません。

一方、築40年で修繕積立金が少なく、修繕履歴が不明で、理事会も必要なときしか開かれていないのであれば、話はまったく異なります。

この場合、清掃回数や管理員勤務時間を検討する前に、建物の状態そのものを確認しなければなりません。

つまり、同じ20戸のマンションであっても、必要な管理体制は同じではありません。

戸数から管理仕様を決めるのではなく、現在抱えているリスクから管理体制を逆算する。

これがKTCで重視している考え方です。

「小規模だから断られる」だけでは説明できない

管理会社側から見ると、小規模マンションは確かに効率のよい物件とは限りません。

20戸でも100戸でも、総会を開催すれば資料は必要ですし、会計処理、請求、入金確認、点検、修繕対応など一定の業務は発生します。

したがって、戸数が少なくなるほど1戸当たりの管理コストが高くなりやすいことは事実です。

しかし、「小規模だから」という説明だけでは十分ではありません。

例えば、同じ20戸のマンションでも、

  • 修繕履歴が整理されている
  • 長期滞納がない
  • 会計資料が継続して残っている
  • 総会・理事会の議事録がある
  • 誰が何を決めたか確認できる

といったマンションと、

  • 過去の工事資料がほとんどない
  • 長期滞納者がいる
  • 修繕積立金が少ない
  • 理事会議事録がない
  • 長年、特定の理事長だけが判断している

といったマンションでは、管理を引き継ぐ際の負担が違います。

後者では、新しい管理会社は通常業務を始める前に、

「何が終わっていて、何が終わっていないのか」

を調べなければなりません。

ここで問題になるのは、管理会社の能力だけではありません。

誰が過去を整理するのかという問題です。

管理組合が整理するのか。

新しい管理会社が整理するのか。

マンション管理士など第三者に頼むのか。

あるいは、一部は分からないものとして、今後の管理を新しく組み直すのか。

管理会社探しが難航しているときほど、この切り分けが重要になります。

具体例――この状態なら、最初に滞納処理をするとは限らない

例えば、次のようなマンションを考えてみます。

修繕積立金は少ない。

管理費会計はほぼ収支均衡。

管理費等の長期滞納者がいる。

過去の修繕履歴は十分残っていない。

総会は年1回開催している。

総会議事録は保管されているが、理事会議事録はない。

理事会は必要に応じて開催している。

この場合、問題はいくつもあります。

滞納も問題です。

議事録がないことも問題です。

修繕積立金が少ないことも問題です。

しかしKTCであれば、最初に確認したいのは建物・設備の現状です。

理由は単純です。

仮に築年数がかなり経過しており、給排水設備や防水、外壁などに大きな修繕時期が迫っているのであれば、修繕積立金不足の意味が変わるからです。

逆に、大きな修繕を直ちに必要としない状態であれば、資金計画を立て直す時間があるかもしれません。

つまり、

「積立金が少ない」

という数字だけでは判断できません。

必要なお金と、持っているお金を比較して初めて、資金不足かどうかが分かります。

このため、

建物・設備の現状確認

今後必要となる修繕の大まかな把握

管理費・修繕積立金の見直し

日常管理の仕様確認

という順番になることがあります。

可能であれば、中長期の修繕計画も作成します。

ただし、ここでも「まず立派な長期修繕計画を作ればよい」わけではありません。

過去の修繕履歴も建物状態も分からないのに、数字だけ精密な計画を作っても、その精度に意味はありません。

最初は粗くても構いません。

今後、何が起こりそうかを把握することの方が重要です。

管理費値上げより先に、管理内容を見直すこともある

資金が足りないと、

「管理費を値上げしましょう」

という話になりがちです。

しかし、値上げが常に最初とは限りません。

例えば、

  • 清掃頻度は現在の利用状況に合っているか
  • 管理員の勤務時間は適切か
  • 点検契約が重複していないか
  • 長年継続している契約の内容を確認したことがあるか
  • 逆に、削ってはいけない点検まで削っていないか

といった確認が先になる場合もあります。

しかし、見直したから「管理費を上げる必要はない」と結論づけるのも早計です。

小規模マンションでは、費用を削った仕事が消えるとは限りません。

管理員業務を減らせば、その分を理事長が対応することになる。

管理会社への委託業務を減らせば、理事会が業者手配を行うことになる。

会計業務を自主管理に戻せば、誰か一人が毎月処理しなければならなくなる。

このようなことは実際によく起こります。

したがって、KTCでは管理仕様を見直すとき、

「この業務をなくしたら、誰がやるのか」

まで考えます。

費用だけを消して、仕事だけが管理組合側に残るのであれば、それは管理の合理化とは言えません。

逆に、住民の中に対応できる人がいて、継続可能な仕組みがあるのであれば、あえて外注しない方が合理的な業務もあります。

ここはマンションごとに違います。

制度上の問題と、運営上の問題は分けて考える

小規模マンションの相談では、

「総会は年1回きちんと開いているので問題ない」

と言われることがあります。

確かに、総会を開催し、議事録を残していることは重要です。

しかし、それだけで日常の管理が機能しているとは言えません。

これは、制度と運営を分けて考える必要があります。

総会が開催されているか。

必要な決議が行われているか。

議事録が作られているか。

これは主に制度や手続の問題です。

一方で、

修繕の相談を誰が受けるのか。

滞納状況をいつ確認するのか。

設備異常を誰が理事会に上げるのか。

次の総会までに何を決めるのか。

これは運営の問題です。

年1回総会を開いていても、日常の判断がすべて理事長一人に集まっているマンションがあります。

その状態で理事長が交代すると、管理が止まってしまうことがあります。

そこで重要なことは、例えば3か月に一度などの定期的な確認です。

毎月理事会を開く必要があるわけではありません。

小規模マンションで会議を増やしすぎると、それ自体が負担になります。

重要なのは頻度ではなく、

  • 会計
  • 滞納
  • 点検
  • 修繕
  • 苦情・事故
  • 今後決めること

を確認する機会を、あらかじめ決めておくことです。

理事長が気づいたときに動く管理から、一定の周期で問題を拾う管理へ変える。

これだけでも、個人依存はかなり減らせます。

長期滞納対応は必要。ただし「何でも同時に」はできない

先ほどの例では長期滞納者がいました。

当然、滞納を放置してよいわけではありません。

滞納額、滞納期間、過去の請求状況、これまでの対応経緯などは早い段階で整理する必要があります。

ただし、現場ではすべてを同時にはできません。

例えば、

建物から漏水が発生している。

修繕積立金がほとんどない。

過去の修繕履歴が分からない。

長期滞納者もいる。

こうした状態なら、まず建物の安全性や緊急修繕の確認を優先することがあります。

これは滞納を軽視しているのではありません。

「重要な問題」と「今すぐ処理しなければならない問題」は同じではないということです。

小規模マンションでは人もお金も限られています。

だからこそ、問題を全部並べたうえで、順番をつける必要があります。

その順番を考えること自体が、管理体制をつくる作業です。

管理会社を探す前に「何を頼むのか」を決める

管理会社が見つからないと、

「管理会社に全部任せたい」

という方向に気持ちが傾くことがあります。

逆に、

「もう管理会社には頼らず、自主管理でいこう」

という意見が出ることもあります。

しかし、この二択にする必要はありません。

例えば、

会計だけ外部委託する。

建物・設備の点検だけ専門家に頼む。

清掃は直接契約する。

理事会運営だけ第三者の支援を受ける。

一部を住民で行い、一部を管理会社に委託する。

こうした組み合わせを考えることも可能です。

もちろん、複数の業者を管理する手間が増えるため、必ずしも分離発注が有利とは限りません。

反対に、課題が多く管理組合だけでは整理できないマンションなら、一定期間は広い範囲を一社に任せて立て直す方がよい場合もあります。

重要なのは、

管理会社に何をしてもらうのかを決めないまま、管理会社を探さないことです。

管理会社を選ぶ前に、管理組合側が最低限確認したいのは、

  1. 修繕積立金残高
  2. 管理費会計の収支
  3. 長期滞納の有無
  4. 修繕履歴
  5. 総会・理事会と議事録の状況
  6. 築年数
  7. 戸数

です。

そのうえで、

今一番危ないのは何か。
今後一番お金がかかりそうなのは何か。
現在、誰か一人に集中している仕事は何か。
外部に任せなければ継続できない仕事は何か。
逆に、管理組合で続けられる仕事は何か。

を整理してみてください。

ここまで整理できれば、「管理会社が見つからない」という問題は、

単に会社探しの問題ではなく、

このマンションに必要な管理体制をどう組み立てるかという問題

に変わります。

KTCが小規模マンションの相談で重視しているのも、ここです。

人を出すことや仕事を丸ごと引き受けることを先に考えるのではなく、まず管理組合が継続できる形を考える。

管理会社を変更する場合も、自主管理を続ける場合も、その土台ができていなければ、数年後に同じ問題が起こります。

管理会社が見つからないときこそ、一度「会社探し」を止めて、マンションそのものを点検してみる。

それが、遠回りに見えて、次の管理体制をつくる一番確実な出発点だと思います。

KTCでは、小規模マンションや自主管理マンションについて、全面委託ありきではなく、現在の管理状況を整理したうえで、どの業務を誰が担うべきかというところから相談をお受けしています。

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