今の管理会社を変えるべきか迷ったとき、見積りを取る前に確認したいこと

「管理会社の対応が遅くなった」

「管理委託費が上がっている」

「一度、他社から見積りを取ってみようか」

理事会でこうした話が出ると、まず複数の管理会社に声を掛け、相見積りを取ろうとすることがあります。

もちろん間違っているわけではありません。

ただ、私共では、管理会社変更の相談を受けたとき、最初から見積りの話には入りません。

先に確認するのは、

「現在、このマンションは、実際にどのような管理体制で運営されているのか」ということです。

ここを把握しないまま見積りを比較すると、金額は比較できても、管理そのものは比較できないからです。

管理会社変更は、単にA社をB社へ入れ替える作業ではありません。

現在の管理の仕組みを一度分解し、何を残し、何を変え、何をやめるのかを決める作業です。

1.最初に見るのは「金額」ではなく、現在の管理の実態

まず確認するのは、現在の管理委託契約書です。

例えば、

  • 管理員は何曜日の何時から何時まで勤務しているのか
  • 管理員と清掃員は別なのか、兼務なのか
  • 日常清掃はどこまで含まれているのか
  • 定期清掃は年何回なのか
  • 理事会、総会の支援はどこまで含まれているのか
  • 設備点検、緊急対応はどの契約に含まれているのか

といった内容を確認します。

ここまでは比較的分かりやすい部分です。

問題は、その次です。

マンション管理では、契約書上の業務と、実際に行われている業務が完全には一致していないことが珍しくありません。

長年同じ管理会社が担当しているマンションでは、担当者が過去の経緯を知っているため、理事会が一から説明しなくても業者との調整が進むことがあります。

契約上は役員からの依頼を前提としていても、居住者から直接相談を受けて担当者が処理している場合もあります。

管理員も、「ここは汚れやすいから」と契約書には書かれていない清掃を行っていることがあります。

こうした対応は、管理組合から見ると「当たり前」になっています。

ところが、管理会社を変更すると、その当たり前が引き継がれるとは限りません。

新しい管理会社から、

「その業務は管理委託契約に含まれていません」

と言われて初めて、

「前の会社はやってくれていた」

と気づくことがあります。

管理会社変更で見落とされやすいのは、この見えない業務の消失です。

2.管理委託契約と、実際の運営は分けて考える

ここで整理しておきたいのは、「契約上の問題」と「現場運営上の問題」は別だということです。

契約書には、管理会社が何を受託するかが書かれています。

一方で、マンションの日常運営は、契約書だけでは動きません。

誰が住民からの相談を最初に受けるのか。

理事長が迷ったとき、担当者がどこまで一緒に考えるのか。

修繕工事の話が出たとき、管理会社が単に見積書を提出するのか、それとも選択肢まで整理するのか。

こうした部分は、契約条項だけではなかなか読み取れません。

さらに、人間関係もあります。

長年勤務している管理員が居住者の事情を把握していたり、担当者と役員の間に信頼関係ができていたりすることもあります。

逆に、その人間関係そのものが問題になっている場合もあります。

したがって、管理会社を変更するか検討するときは、

契約
実際の運営
人間関係

を一度分けて考えた方がよいと思います。

「管理会社に不満がある」という一言でまとめてしまうと、何が問題なのか分からなくなるからです。

3.相見積りは「同じ仕様」にすれば公平、とは限らない

工事の相見積りでは、数量、材料、施工範囲をできるだけ揃えて比較するのが基本です。

マンション管理でも、一定程度は同じ考え方が必要です。

管理員の勤務時間も清掃回数も違う見積書を並べて、

「こちらの方が安い」と比較しても意味がありません。

そのため、できるだけ現在の委託内容を統一して見積りを依頼する必要があります。

ただし、ここに落とし穴があります。

管理会社のサービスは、工事ほど完全には仕様化できません。

例えば、「理事会支援」という業務があっても、

ある会社では、理事長から言われた内容を資料化するところまで。

別の会社では、問題点を整理し、選択肢を示し、理事会で判断できる状態まで準備する。

どちらも契約書では「理事会支援」と表現されます。

さらにプレゼンテーションでは、

「柔軟に対応します」
「できる限りお手伝いします」
「何でもご相談ください」

という説明が出ることがあります。

しかし、「何でも相談できる」と「何でも業務として行う」は別の話です。

したがって、KTCでは管理会社の比較を、

①数量として揃える部分

②会社ごとの考え方や体制を見る部分

に分けた方がよいと考えています。

すべてを同じ仕様にしてしまうと、各社の特徴まで消えてしまいます。

逆に仕様を自由にしすぎれば、比較ができません。

管理会社選びは、その中間にあります。

4.見積りを取る前に、「何が不満なのか」を管理組合の中で分ける

管理会社変更の話が出たとき、意外に難しいのがここです。

一人の組合員は、

「清掃が悪い」と思っている。

理事長は、

「担当者から返事が来ない」ことに困っている。

別の役員は、

「管理委託費が高い」と考えている。

さらに他の組合員は、

「今のままで特に困っていない」と思っているかもしれません。

この状態で管理会社のプレゼンテーションを受けると、同じ説明を聞いても、それぞれ違う基準で採点します。

結果として、

「A社がよかった」
「いやB社だ」
「結局、何が違うのか分からない」

となりやすい。

これは管理会社の問題ではなく、管理組合の意思決定の基準が整理されていない問題です。

だから、会社を探す前に、

「現在の管理で何を改善したいのか」

をできるだけ共有しておく必要があります。

例えば、

  • 清掃品質
  • 担当者の対応速度
  • 理事会への支援
  • 修繕に対する技術的な助言
  • 管理委託費
  • 管理員の勤務時間
  • 緊急時の対応

などです。

そのうえで、

絶対に維持したいもの
改善したいもの
なくなっても構わないもの

に分けるだけでも、比較の精度はかなり上がります。

5.担当予定者を見る。しかし、担当者だけでは決めない

プレゼンテーションでは営業担当者が説明することが一般的です。

しかし、管理開始後に実際に理事会とやり取りするのは、多くの場合フロント担当者です。

そのため可能であれば、実際の担当予定者にも参加してもらい、

  • 経験年数
  • 担当物件数
  • 小規模マンションの経験
  • 理事会への参加方法
  • 問題発生時の社内相談体制

などを聞くのは有効です。

ただし、

「この担当者がよさそうだから、この会社にしよう」

だけで決めることにはリスクがあります。

担当者は原則異動します。

退職することもあります。

受託後に担当変更になることは珍しくありません。

そこで私たちが重視するのは、

担当者が変わっても管理が続く仕組みがあるか、です。

例えば、

「担当者が休んだら誰が対応するのか」

「判断が難しい案件は誰に相談するのか」

「担当者変更時には、過去の経緯をどのように引き継ぐのか」

といったことです。

これは大手管理会社が優れていて、中小管理会社が劣っているという意味ではありません。

大手には組織的なバックアップを作りやすい強みがあります。

一方、中小では担当者や経営者が直接判断でき、柔軟に対応できる場合があります。

重要なのは、その規模ではなく、

そのマンションに必要な管理を、担当者個人の能力だけに頼らず継続できるか、です。

6.管理会社を変えないという選択肢もある

管理会社変更を検討し始めると、いつの間にか、

「変更するか、しないか」という二択になりがちです。

しかし、実際にはその中間にも多くの選択肢があります。

例えば、担当者への不満であれば、担当変更を依頼する。

清掃に問題があるのであれば、清掃仕様だけ見直す。

管理員勤務時間が過剰であれば、勤務時間を減らして管理委託費を調整する。

逆に、理事会支援が不足しているのであれば、その部分だけ外部専門家を利用する方法もあります。

一部だけ別会社へ委託するという考え方もあります。

つまり、

現在の管理会社を全面的に残すか、全面的に変更するか、という二択だけではない、ということです。

KTCでは、管理会社変更そのものを目的にするより、

「今の管理体制のどこが機能していて、どこが機能していないのか」を先に考える方が重要だと考えています。

その結果、現在の管理会社を継続するという結論になることもあります。

それで問題はありません。

管理組合にとって重要なのは、管理会社を変更した実績ではなく、今後の管理が安定して続くことだからです。

7.見積りを取る前に、まずこの5つを確認する

管理会社変更を考え始めたら、まず次の5つを確認してみてください。

1.現在の契約上の業務は何か

管理員、清掃、会計、理事会支援、設備点検などを一度整理します。

2.契約書には書かれていないが、実際にはやってもらっていることは何か

ここが変更後に失われやすい部分です。

3.現在の不満は、契約・運営・人間関係のどこにあるのか

一つにまとめず、分けて考えます。

4.その問題は、本当に管理会社を変更しなければ解決できないのか

担当変更、仕様変更、一部委託などの選択肢も確認します。

5.次の管理会社に何を最も求めるのか

3~5項目程度まで優先順位を絞ります。

ここまで整理できてから見積りを取れば、単なる価格比較ではなくなります。

管理会社変更で重要なのは、

一番安い会社を探すことでも、一番何でもやってくれそうな会社を探すことでもありません。

現在の管理体制を一度見える形にし、

何を残すのか。

何を変えるのか。

何を管理会社に任せ、何を管理組合が判断するのか。

その境界を整理することです。

管理会社変更は、その作業を行う一つのきっかけです。

KTCでは、小規模マンションや自主管理マンションを中心に、管理会社の見積りを取る前の「現在の管理体制の整理」についてもご相談をお受けしています。

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