管理会社変更で失敗するマンション
管理会社を替えたのに、なぜよくならないのか
「担当者の対応が遅い」「提案が少ない」「委託費が高い」「理事会の意向を理解してくれない」。
こうした不満が重なれば、管理会社の変更を検討することもあるかと思います。実際、変更によって会計処理が明確になり、停滞していた修繕工事などが動き始めることもあります。問題のある管理会社との契約を、無理に続ける必要もありません。
一方、時間をかけて選び直したのに、数年後には「前の会社の方がまだよかった」「新しい会社も動かない」となるマンションもあります。
その原因は、変更先の選定ミスだけではありません。実務では、候補会社を選ぶ前から失敗が始まっていることがあります。
現在の不満の原因を分けて考えない。変更後に何を実現するか決めていない。各社へ違う条件で見積りを求めてしまう。未処理案件を伝えない。変更後の役割分担を決めていない。このような状態では、評判のよい会社へ変更しても期待どおりに機能しないことがあります。
管理会社変更で重要なのは、「どの会社に替えるか」だけではなく、「何を変え、何を管理組合に残すか」を事前に決めておくことです。
失敗は「会社選び」より前に始まっている
管理会社への不満には、性質の違う問題が混在しています。少なくとも、次の五つに分けて考える必要があります。
- 制度上の問題
総会決議などが必要で、管理会社だけでは決められないこと - 契約上の問題
管理組合は期待しているが、委託契約に含まれていないこと - 管理会社の履行上の問題
契約に含まれているのに、報告や対応が十分でないこと - 管理組合の運営上の問題
理事会で方針を決められない、依頼窓口が複数ある、必要な決議を先送りしていること - 感情・人間関係の問題
担当者への不信、役員間の対立、過去の対応へのわだかまり
例えば、修繕が進まない原因が管理会社から提案がないことなら、提案業務の範囲や報告方法を見直す余地があります。しかし、実際の原因が理事会内の意見対立や資金不足なら、管理会社を替えても工事は進みません。
逆に、契約に定めた報告が繰り返し行われない、会計処理への疑問に説明がない、改善要求を記録で伝えても対応されないのであれば、変更の合理性は高まります。
これは管理会社を擁護するための分類ではありません。会社を替えて解決する問題と、管理組合側に残る問題を分けて考えなければ、変更後も同じ失敗を繰り返すということです。
KTCが、見積りより前に確認すること
KTCが管理会社変更の相談を受けたとき、最初から「当社なら解決できます」とは判断しません。受託できるかどうかより先に、管理組合として変更を進められる状態かを確認します。
具体的には、次のような点です。
- 変更理由は、理事長個人の不満ではなく、理事会で共有された課題になっているか
- 現管理会社へ改善を求めた記録や、その回答などを確認できるか
- 変更によって達成したい状態を、担当者の印象ではなく業務条件で示せるか
- 滞納、修繕、事故、紛争などの未処理事項を候補会社へ開示しているか
- 変更後に管理組合が担う判断と、管理会社へ委託する業務を分けて理解されているか
複数の相談で見られた事情を組み合わせると、典型的な失敗が見えてきます。
ある管理組合では、理事長は長く変更を検討していましたが、他の役員は「担当者を替えてもらえばよい」と考えていました。候補会社には現管理会社への不満を詳しく伝えた一方、長期修繕計画の未更新や意見が割れている工事、過去の漏水案件までは整理していませんでした。
この状態で契約だけを替えると、新管理会社は受託後に未処理案件を知ります。通常業務と過去案件の整理を同時に進めるため回答が遅れ、管理組合には「新しい会社も動かない」と映ります。
ここで必要なのは、理事長にさらに頑張ってもらうことではありません。役員が交代しても、変更理由、未処理事項、判断方法が引き継がれる形にすることです。管理会社変更は会社選びではなく、管理運営方針の見直しだとKTCが考える理由はここにあります。
安さ、大手・中小、担当者の熱意だけでは決められない
複数社の見積金額が並んでいても、同じ管理内容を比較しているとは限りません。管理員の勤務時間、理事会出席、議事録案の作成、滞納督促、設備異常時の現地対応、長期修繕計画の見直し支援など、業務範囲や前提条件が違うことがあります。
委託費が下がっても、減った業務を役員が担うなら、単純な経費削減とはいえません。反対に、委託費が上がっても、一部の役員に集中していた作業を移し、役員交代が可能になるなら、管理組合全体の負担は下がることがあります。
大手は標準化や代替要員の体制を持ちやすい一方、個別対応には制限が生じやすい。中小は柔軟に動きやすい一方、限られた担当者に負荷が集中しやすい。これは優劣ではなく構造の違いです。中小管理会社が多少無理をして受託し、当初は熱心でも、想定以上の業務量によって徐々に対応が遅れることもあります。
説明会に来た担当者が受託後も担当するとは限りません。担当者の印象に加え、不在時の代替体制、担当物件数、社内の承認範囲、専門部署との連携まで確認する必要があります。
変更を繰り返すと、次の選択肢が狭くなる
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、管理業者へ業務を委託している管理組合のうち、分譲時の管理業者から現在の管理業者へ変更した組合は24.5%でした。ただし、この調査は変更回数と受託辞退の関係まで示していません。
変更歴だけで「問題のある管理組合」と決めつけることはできませんが、短期間に変更を繰り返していれば、候補会社は、契約外の要求、役員間の対立、管理費不足、未処理案件、再解約の可能性を詳しく調べます。変更回数が多いと、受託審査時の警戒シグナルにはなります。
過去の管理会社変更経緯を説明できなければ、候補会社は見えないリスクを価格や契約条件に織り込むか、受託を辞退します。だからといって、管理会社側の条件をすべて受け入れるわけではありませんが、必要な業務を絞る、一部委託にする、管理組合側の窓口を整える、外部専門家を併用するなど、受託可能な体制へ組み直す必要が生じます。
問題は、管理会社を替えたことではありません。前回の変更で何を改善し、何が残り、今回は何を変えるのかを説明できないことが、次の選択肢を狭くするのです。
変更前に、管理組合が確認すべきこと
見積りを依頼する前に、少なくとも次の内容を整理してみてください。
- 現在、具体的に何が起きているか
- 原因は制度、契約、履行、組合運営、人間関係のどこにあるか
- 現管理会社へ、いつ、どのような改善を求めたか
- 変更しなければ解決できない理由は何か
- 変更後、いつまでに何が改善すれば成功とするか
- 候補会社へ開示すべき未処理事項は何か
- 管理組合側で改める運用は何か
- 変更によって失うサービス、増える費用や役員負担は何か
例えば「返事が遅い」だけでは比較検討することはできません。「通常の問い合わせには3営業日以内に一次回答する」「緊急時の連絡経路を一本化する」「理事会資料は開催日の7日前までに提出する」と定めれば、候補会社も実行可能性を判断できます。
一方、現管理会社のままでも、担当者の交代、業務仕様の見直し、一部業務の分離、理事会支援だけの外部委託で改善できる場合もあります。ただし、重大な契約不履行や会計処理への不信がある場合は、準備を理由に対応を先延ばしにすべきではありません。
管理組合にとっての資産は、事情を知る理事長が長く在任することではなく、その人が退任しても次の役員が同じ経緯を説明できることです。
失敗を避ける決め手は、「正解の管理会社」を探し当てることではなく、問題を分け、必要な業務を定め、管理組合と管理会社の役割を決め、変更後も検証できる体制を構築することです。
KTCでは、管理会社変更を前提にせず、変更目的、業務範囲、引継事項、役員交代後も経緯が残る管理体制を整理しています。何を条件に比較すべきか分からない場合は、ご相談ください。
参考資料

