小規模マンションはなぜ管理会社に断られやすいのか
「小規模マンションなので、管理会社に断られた」
そのような相談を受けることがあります。
確かに、10戸、20戸程度のマンションは、50戸、100戸のマンションと比べると管理委託費の総額を大きくしにくいため、管理会社にとって採算を合わせにくい面があります。
しかし、私たちが実際に受託を検討するとき、小規模であることだけを理由に判断しているわけではありません。
むしろ重要なのは、
「なぜ今、管理会社を探しているのか」という点です。
現在の管理会社が撤退することになったのか。
管理委託費の値上げが受け入れられなかったのか。
管理組合と管理会社の関係が悪化したのか。
自主管理を続けることが難しくなったのか。
あるいは、長年解決できていない問題が残っているのか。
同じ「管理会社を探しているマンション」でも、事情によって受託後に必要となる仕事はまったく異なります。
小規模マンションが断られやすい本当の理由は、戸数が少ないからではありません。
もともとの管理委託費が小さい一方で、問題が起きたときに必要となる仕事は、戸数に比例して小さくならないからです。
ここを理解しておかないと、何社に見積りを依頼しても、同じ結果になることがあります。
小規模だから、管理が簡単とは限らない
戸数が少なければ、区分所有者も少なくなります。
そのため、100戸、200戸のマンションと比べれば、全員の顔が見えやすく、意見をまとめやすいマンションもあります。
しかし、
「人数が少ない=管理が簡単」とは限りません。
例えば15戸のマンションで一人が長期間管理費を滞納すれば、全体に与える影響は決して小さくありません。
役員のなり手についても同じです。
15戸あっても、賃貸化している住戸、遠方所有者、高齢の区分所有者などが増えていけば、実際に管理組合運営に関われる人が数人しか残らないことがあります。
一人の役員が辞めただけで、会計も修繕も総会準備も止まってしまうことすらあります。
つまり、小規模マンションは、
「問題が少ない」というよりは、
一つの問題や一人の負担が、管理組合全体に与える影響が大きい
という見方の方がより実態に近いのです。
管理会社が警戒するのは「定量の仕事」より、その前に残っている仕事
管理会社が通常の管理委託費を見積もる場合、ある程度計算できる仕事があります。
会計業務。
管理員や清掃業務。
理事会・総会の支援。
設備点検。
毎月の報告。
こうした業務であれば、年間にどの程度の仕事が発生するかを予測できます。
問題は、その前です。
例えば、受託に向けて調べていくと、
何年も処理されていない滞納がある。
過去の総会議事録が揃っていない。
契約関係が整理されていない。
修繕積立金が不足している。
長期修繕計画と実際の建物状態が合っていない。
設備が更新時期を大幅に超えている。
過去の工事や専有部分の改修について経緯が分からない。
区分所有者同士の対立が続いている。
このような問題が出てくることがあります。
これらは「通常の管理業務」ではありません。
過去の資料を調べ、現状を確認し、問題点を整理し、理事会や区分所有者へ説明し、必要であれば総会で意思決定してもらう必要があります。
つまり、管理開始前後に、
管理組合を正常な状態へ戻すための仕事が発生します。
私たちは、ここを通常の管理業務とは分けて考えます。
毎月の管理を続けるための費用と、過去から残っている問題を整理する費用は、別のものだからです。
ところが、これをすべて通常の管理委託費の中で処理しようとすると、小規模マンションではすぐに採算が崩れます。
逆に言えば、
「月額○万円なら受けられるか」
だけで管理会社を探しても、問題の本質に届かないことがあるのです。
十数戸の自主管理マンションで起きていたこと
以前、十数戸、築40年前後の自主管理マンションについて相談を受けたことがあります。
管理組合運営に実際に関わっていた区分所有者は、ほぼ2名でした。
この2名が、長年にわたり、管理費等の請求、集金、収支管理、清掃、修繕の手配などを行っていました。
しかし、年齢を重ね、これ以上2名だけで続けることが難しくなり、外部へ相談することになりました。
状況を確認していくと、単に、
「役員が大変になったので管理会社を入れたい」という話ではありませんでした。
給水設備には不具合があり、近い将来の更新を検討する必要がありました。
建物についても、過去の改修内容を確認しなければならない事項がありました。
水道料金は、計算の負担から簡易な方法で徴収されていました。
管理費等は、役員が各住戸を回って現金で集めていました。
そして、修繕積立金の残高は数百万円程度でした。
※事例は、特定の管理組合が分からないよう一部内容を変更しています。
この状態で管理会社を入れれば、翌月からすべて正常になるでしょうか。
そうはなりません。
管理会社が銀行振込による徴収に変更することはできます。
会計帳簿を作成することもできます。
設備業者を手配することもできます。
しかし、
修繕積立金が足りないのであれば、
増額するのか。
一時金を徴収するのか。
工事内容を見直すのか。
どの工事を優先するのか。
これらを決めるのは管理会社ではありません。
管理組合です。
ここには、管理会社との契約の問題とは別に、管理組合自身の意思決定の問題があります。
一番難しいのは、設備故障ではなく「決められない状態」
このようなマンションを見ると、
「給水設備が壊れそうだから危険だ」
「修繕積立金が足りないから問題だ」
と考えがちです。
もちろん、それらも重要です。
しかし、私たちがより警戒するのは、
問題が分かっているのに、誰も決められない状態です。
例えば給水設備が故障しかけていても、必要な工事費を管理組合が承認できるのであれば、対応できます。
修繕積立金が不足していても、区分所有者が状況を理解し、積立金増額や一時金について議論できるのであれば、時間をかけて立て直すことができます。
反対に、
資金不足が分かっている。
設備の劣化も分かっている。
役員の負担が限界に達している。
それでも、
「値上げは嫌だ」
「誰かが何とかしてくれるだろう」
「これまで大丈夫だったから、今後も大丈夫だろう」
という状態であれば、管理会社と契約または管理会社を変更したからといって、解決はしません。
管理会社には、管理組合に代わって管理費を値上げする権限も、工事を強制する権限もないからです。
ここは、制度上の権限と、現場で期待される役割を分けて考えなければ、物事の本質にたどり着きません。
2人が頑張ったことが問題なのではない
先ほどの事例では、
「2人だけで管理していたことが悪かった」のではありません。
むしろ逆です。
その2人がいたから、なんとかマンション管理が成り立っていたのです。
問題は、
2人が頑張り続けることを前提にした管理体制になっていたことです。
これは自主管理マンションに限りません。
管理会社が入っているマンションでも、非常に熱心な理事長が何年も続けている場合があります。
理事長が業者との交渉も、工事の確認も、住民対応も、会計確認も行っている。
その理事長が就任している間は非常に良く管理されているように見えます。
しかし、その人が退任した途端、誰も経緯が分からなくなる。
これは本当に「良い管理」だったのでしょうか。
私たちは、管理状態を見るとき、
「今うまくいっているか」だけではなく、
「今の担当者がいなくなっても、この方法で続けられるか」
を見る必要があると考えています。
管理組合運営を個人の能力や献身に依存させない。
これは、小規模マンションほど重要になります。
管理会社を探す前に、「正常化」と「通常管理」を見分ける
管理会社に断られたとき、
「小規模マンションでも受けてくれる会社をもっと探そう」という方法もあります。
もちろん、それで解決するマンションもあります。
現在の管理状態に問題がなく、単に前管理会社の事業方針や採算基準によって契約終了となったのであれば、別の管理会社を探せばよい場合もあります。
一方で、既に複数の問題が積み残されているのであれば、いきなり通常の管理委託契約を結ぶより、
まず現在の状態を整理する方が解決までの道のりが早いかもしれません。
具体的には、
この先必要な修繕を洗い出す。
滞納者への対応を明確化し、会計を正常化に向ける。
徴収方法を変更する。
過去の未処理案件を整理する。
管理組合として決めなければならないことを整理する。
そのうえで通常管理へ移行する、というスケジュールを立てる。
全面委託だけが選択肢ではありません。
会計だけを外部化する方法もあります。
設備管理だけを外部化する方法もあります。
一定期間だけ専門家の支援を受け、管理体制を整えてから管理会社を探す方法もあります。
逆に、現在の自主管理が十分に機能しているのであれば、無理に管理会社へ全面委託する必要もありません。
重要なのは、
「自主管理か、管理会社か」という二択ではありません。
誰が決めるのか。
誰が実行するのか。
誰が確認するのか。
それを次の役員へどう引き継ぐのか。
ここが決まっているかどうかです。
管理会社に見積りを頼む前に確認してほしいこと
小規模マンションで管理会社変更を考えているのであれば、見積書を集める前に一度確認してみてください。
現在の管理業務は、問題なく回っているでしょうか。
この先数年以内に大きな修繕はありませんか。
管理費会計や修繕積立金に不足はありませんか。
滞納や長期間未処理になっている案件はありませんか。
過去の議事録、契約書、図面、工事記録は残っていますか。
そして、
「管理会社に任せたいこと」と「管理組合自身が決めなければならないこと」が区別されていますか。
ここまで整理できれば、管理会社も受託後に必要となる仕事を予測しやすくなります。
結果として、受託可能な管理会社が増えることもあります。
また、管理委託費が高く提示された場合でも、
「通常管理が高いのか」
「最初の立て直しに費用がかかるのか」
を分けて考えることもできます。
管理会社に断られたことだけで、すべてが問題なのではありません。
その理由を確認することが重要です。
なぜ断られたのか。
何を直せば受託できる状態になるのか。
そもそも全面委託する必要があるのか。
そこまで整理して初めて、本当の意味で管理会社を選べる状態になります。
関西建物センターでは、小規模マンションや自主管理マンションについて、単に管理業務を引き受けるだけではなく、現在の管理状態を整理し、どこを外部化し、どこを管理組合に残すのかを含めて管理体制を検討しています。
管理会社探しを始める前の段階でも、ご相談ください。

