マンション管理員の後任が見つからない――管理員を置かずに管理を続ける方法はあるか

管理員が退職することになった。しかし、管理会社からは「後任が見つからない」と言われている。

その結果、管理員の勤務日数を減らすか、管理委託費を増額するか、選択を求められた。

最近では、このような話を耳にする機会が増えています。

管理会社側からすると、人件費や採用費などの負担は大きくなっています。一方、管理委託費の見直しは、契約更新などの機会を通じて行うことが多く、人件費の上昇に追いつかない場合もあります。

そこで、管理委託費を据え置く代わりに、管理員の勤務日数を減らす提案が出てきます。

しかし、勤務日数を減らすと、働く人にとっては収入の減少につながり、かえって人材の確保が難しくなることがあります。

こうした状況が続けば、特に小規模マンションでは、従来の管理員配置を維持することが難しくなるかもしれません。

そこで、ここは、これまでの前提を疑ってみましょう。

そもそも、マンションに管理員は本当に必要なのでしょうか。

もちろん、管理員がいることには多くの利点があります。

しかし、管理員がいることと、マンションが適切に管理されていることは、必ずしも同じとは言えません。

管理員がいなくなったら、実際に何が困るのか。

その問題を一つずつ整理することで、従来とは異なる管理方法が見えてくる可能性があります。

1.管理員がいなくなると、何が困るのか

まず、管理員が日常的に行っている仕事を考えてみましょう。

一般的には、受付、建物や設備の巡回、業者の立会い、管理会社への報告・連絡などがあります。

また、清掃業務を兼ねている管理員も多くいます。

さらに、居住者からの相談を受けたり、共用部分の異常を発見したり、緊急時に現場の状況を確認したりすることもあるでしょう。

では、これらの仕事は、すべて管理員が常駐していなければできないものでしょうか。

例えば、清掃業務です。

清掃が必要なことは当然ですが、清掃専門の作業員が決められた曜日に訪問する方法でも対応できます。

受付業務についても、書類の受け渡しや届出などは、郵送や電子メール、管理会社による定期訪問などで代替できる場合があります。

専門業者の立会いについても、事前に鍵の管理や作業方法を取り決めておけば、管理員がいなくても実施できるものがあります。

巡回については、建物の種類や設備によって異なりますが、必ずしも毎日実施する必要があるとは限りません。

ただし、管理員が日常的に建物を見ていることには意味があります。

例えば、照明が切れている、ゴミ置場に不用品が放置されている、扉の閉まりが悪い、といった変化に気づくことができます。

しかし、こうした異常を発見するためだけに、常に管理員を配置する必要まであるのでしょうか。

居住者からの報告や、定期的な巡回によって発見できるものもあるはずです。

ここで大切なのは、現地で作業する必要があることと、現地に人が常駐する必要があることとは別だという点です。

必要な業務を、必要な頻度で実施する。

まずは、そこから管理員の配置を考え直す必要があります。

2.共用廊下の照明が切れたら、すぐに交換すべきなのか

具体的な例で考えてみましょう。

週1回、水曜日に巡回点検を実施しているマンションがあるとします。

金曜日に、居住者から「共用廊下の照明が切れている」と連絡がありました。

この場合、どのように対応するのが合理的でしょうか。

もちろん、その日のうちに担当者を派遣して交換することも考えられます。

しかし、通常の共用廊下で照明が1灯切れただけで、周囲の照明によって十分な明るさが確保されている場合、そこまで急ぐ必要があるでしょうか。

そのような場合には、翌週水曜日の巡回時に交換するという方法が考えられます。

金曜日に報告を受け、水曜日に交換できれば、5日程度で対応が完了します。

週1回の巡回であれば、報告を受けてから次の巡回までは、原則として7日以内です。

ただ、照明器具自体の故障や、専門業者による交換が必要な場合には、別途手配が必要になります。

また、同じ照明の不点灯でも、階段が暗くなって転倒の危険が生じる場合や、防犯上の問題がある場所では、判断が変わります。

この場合は、次回巡回を待たずに対応することも必要です。

つまり、「照明が切れた」という事実だけでは、対応方法は決まりません。

どこが切れたのか。

その結果、どのような支障が生じているのか。

そのため、いつまでに交換すればよいのか。

こうしたことを判断する必要があります。

不具合が発生したから、すぐに人を派遣するのではなく、その緊急度と重要度によって対応方法を決める。

これが、KTCの考える重点管理の基本です。

3.重点管理は、巡回点検と緊急対応を組み合わせること

一般的な巡回管理では、巡回点検と緊急対応が、それぞれ独立した業務として扱われます。

例えば、巡回担当者が建物を点検し、報告書を提出する。

管理会社は、その報告書を確認する。

不具合があれば、必要に応じて改めて業者を手配する。

通常業務の役割分担です。

しかし、これでは現地で不具合を発見しても、実際の対応までに時間がかかる場合があります。

また、簡単な不具合であっても、別の日に担当者や業者を派遣することになれば、移動時間や費用が発生します。

そのために、管理員を常駐されているようなマンションもあります。

例えば、先ほどの照明交換で考えてみましょう。

巡回点検時に、交換用の電球を持参して作業できるのであれば、わざわざ別の日に交換する必要はありません。

反対に、緊急性が高い不具合であれば、次の巡回まで待つべきではありません。

つまり、定期巡回と臨時対応は、別々に考えるのではなく、一体として運用した方が合理的なのです。

KTCでは、過去に協力会社の巡回ルートを活用して、マンションの巡回点検を実施していました。

協力会社が現地を巡回し、点検報告書を作成する。

現地判断により、緊急性の高いものはリアルタイムで報告する。

KTCは、その報告内容を確認し、緊急度・重要度に応じ、管理組合に伝える必要がある不具合かどうかを判断する。

このような役割分担で運用していました。

重要なのは巡回点検を実施することではありません。

巡回で何かを発見した場合、その情報をどのような対応につなげるのか。

そこに判断が必要となります。

KTCが提案する重点管理方式は、これまでの巡回点検の経験をもとに、さらに対応方法を組み合わせようという考え方です。

例えば、緊急性の低い照明交換は、次回巡回に組み込む。

漏水など、被害の拡大が懸念される場合には、必要に応じて臨時の現地対応を行う。

外壁のひび割れなど、直ちに工事が必要とは限らないものについては、危険性を確認したうえで、経過観察や専門的な調査につなげる。

次回巡回まで待つだけでもなく、何でも緊急出動するものでもない。

不具合の内容によって、定期巡回と臨時対応を使い分ける。

巡回点検、清掃、簡易な現地対応、緊急出動を、独立した業務として扱わず、相互に組み合わせて効率的に実施する。

これが重点管理方式の基本的な考え方です。

4.重要なのは、誰が判断し、誰が対応を完了させるか

ここで一つの問題があります。

不具合の緊急度と重要度を、一体誰が判断するのでしょうか。

例えば、居住者から「廊下の照明が切れている」と報告があった場合です。

その連絡を受けた人が、照明の場所や周囲の状況を確認する。

緊急性が低いと判断できれば、次回巡回時の交換を手配する。

緊急性が高い可能性があれば、現地確認や臨時対応を手配する。

さらに、交換が完了したことを確認し、必要に応じて報告した居住者にも結果を伝える。

ここまでが、一つの不具合に対する対応の流れです。

単に巡回点検を実施するだけでは、この流れは完成しません。

また、緊急連絡先を設けているだけでも十分ではありません。

連絡を受けたあと、誰が状況を判断し、誰が現地対応を手配するのかが決まっていなければ、結局、理事長への確認が必要になることがあります。

これでは、管理員の業務を減らした代わりに、理事長の負担が増えただけです。

重点管理では、この判断と手配の流れを、あらかじめ整理しておく必要があります。

例えば、管理会社が契約上の権限の範囲内で処理できる軽微な作業については、一定の基準を設けて対応する。

費用が大きいものや、管理組合の方針に関わるものについては、理事会などに確認する。

また、緊急性が高いものについては、必要な応急措置を行えるよう、事前に対応範囲を決めておく。

こうした役割分担が重要になります。

管理組合には、管理方針や予算などを決める役割があります。

一方、日常的な不具合について、すべて理事長が判断しなければならない仕組みでは、管理員を廃止しても、管理組合の負担は軽くなりません。

管理会社が判断できることと、管理組合が判断すべきことを予め区別しておく。

そのうえで、不具合の受付から対応完了までの流れをつくる必要があります。

5.管理員を置かない方式にも限界がある

もちろん、重点管理方式がすべてのマンションに適しているわけではありません。

例えば、毎日のようにゴミ置場の整理が必要なマンションでは、週1回の巡回だけでは対応が難しいものです。

居住者からの相談や受付業務が多いマンションでは、管理員がいなくなることで、不便を感じる人が増えることも考えられます。

特に高齢の居住者が多いマンションでは、管理員が身近な相談相手になっている場合もあります。

そうした役割を、単純に不要な業務として扱うことはできません。

また、週1回の巡回点検を前提にすると、巡回と巡回の間に発生した不具合の発見が遅れる可能性もあります。

そこで、居住者との協力体制が重要になったりします。

居住者が異常を発見した場合、気軽に報告できる窓口を設ける。

報告を受けた側は、内容を確認し、必要な対応へつなげる。

ただし、これは居住者に管理業務を任せるという意味ではありません。

報告してくれる人がいなければ管理が成り立たない、という仕組みにしてしまうと、特定の居住者への依存が生じます。

日常的な巡回は継続しながら、居住者からの情報も活用できることが大切です。

さらに、緊急度の判断を誤れば、対応が遅れて被害が拡大する可能性もあります。

何でも次回巡回に回してしまえば、単なる対応の先送りにしかなりません。

そのため、判断に迷う場合の確認方法や、次回巡回まで待てない場合の対応方法は決めておく必要があります。

また、管理員を廃止すれば必ず安くなる、というわけでもありません。

巡回費用、清掃費用、臨時出動費用、業者の立会費用などを組み合わせると、結果的に従来と大差がない場合もあります。

現地への訪問回数が増えれば、かえって費用が高くなることもあるかもしれません。

重点管理方式は、費用削減を保証する方法ではありません。

管理の品質と費用を比較しながら、必要な業務を合理的に組み合わせる方法です。

6.管理員の配置を見直すとき、管理組合が確認すべきこと

では、実際に管理員の後任が見つからない場合、管理組合は何から確認すればよいのでしょうか。

まずは、現在の管理員が実際に行っている業務を確認することです。

管理委託契約書に記載された業務内容だけでなく、清掃、巡回、受付、業者の立会い、居住者対応などの実態を整理します。

そのうえで、過去の不具合対応記録を確認してみてください。

例えば、直近3か月程度で、どのような不具合が発生していたでしょうか。

照明の不点灯、扉の不具合、ゴミ置場の問題、設備の故障など、発生した内容を整理します。

そして、それぞれについて、次のような点を確認します。

  • 誰が不具合を発見したのか
  • 実際にどの程度の緊急性があったのか
  • 誰が対応方法を判断したのか
  • 何日後に、どのような対応をしたのか
  • 定期巡回に組み込むことは可能だったのか

こうした確認を行うことで、管理員が常駐していなくても処理できる業務と、現地での迅速な対応が必要な業務を区別しやすくなります。

その結果をもとに、従来どおりの管理員配置を維持する方法、勤務日数を減らす方法、巡回と清掃を組み合わせる方法などを比較します。

このとき、単純に管理委託費の金額だけを比較するべきではありません。

管理員がいなくなることで、実施しなくなる業務は何か。

代わりに実施する業務は何か。

緊急時の現地対応は誰が行うのか。

臨時出動には、どの程度の追加費用が必要なのか。

不具合の判断や作業手配は、誰の仕事になるのか。

こうした点を明確にしたうえで、総額と管理内容を比較する必要があります。

また、法令上必要な設備点検などは、管理員の配置変更とは別に維持しなければなりません。

可能であれば、いきなり管理員を廃止するのではなく、一部の業務を巡回方式へ変更し、実際に支障が生じないかを確認する方法も考えられます。

7.管理員を置かないことは、管理をしないことではない

マンション管理は、長い間、管理員が現地に勤務することを前提に考えられてきました。

しかし、人材の確保が難しくなり、人件費の上昇が続くなか、従来の管理体制をそのまま維持できないマンションも増えてきています。

特に小規模マンションでは、管理員を配置するための固定的な費用を、少ない戸数で負担しなければなりません。

だからこそ、管理員の後任が見つからなくなったことを、単なる人手不足の問題として終わらせるべきではないと考えます。

管理員が行っていた業務を確認し、必要な作業を必要な頻度で実施する。

不具合が発見された場合には、緊急度と重要度を判断し、定期巡回で対応するのか、臨時の対応が必要なのかを決める。

その結果を確認し、管理組合に必要な情報を報告する。

こうした管理体制を整えることで、管理員を常駐させない方法も選択肢となります。

もちろん、管理員を置く方が適切なマンションもあります。

管理員を廃止することが目的ではありません。

大切なのは、管理員という人員配置を維持することではなく、マンションに必要な管理機能を維持することです。

そして、そのために理事長や特定の居住者が新たな負担を抱え込むのであれば、それは、継続できる管理体制とはいえません。

KTCが考える重点管理方式は、巡回点検と清掃を組み合わせるだけではありません。

巡回点検、居住者からの情報、緊急度・重要度に応じた対応を一体として考え、限られた人員と費用の中で、効率的に管理を継続させる仕組みです。

管理員の後任が見つからないという問題は、これまでの管理方法を見直す機会になります。

まずは現在の管理員業務と不具合対応の実態を整理し、そのマンションに合った管理方法を考えてみてはいかがでしょうか。

KTCでは、小規模マンションの管理員配置の見直しや、巡回点検と清掃を組み合わせた重点管理方式について、ご相談を承っています。

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