管理会社とは何をする会社なのか
管理会社にもマンション管理士にも解決できないマンションが生まれる理由
「何社に問い合わせても、管理を引き受けてもらえない」
「マンション管理士に相談して問題点は分かったが、その後の実務をする人がいない」
最近、こうした状況に置かれた管理組合から、マンション管理士を通じて管理会社へ相談が持ち込まれることがあります。
マンション管理士からの問い合わせは、概ね次のようなものです。
「小規模マンションですが、管理を引き受けられませんか」
「自主管理を続けることが難しくなっています。会計業務だけでも対応できませんか」
本来、マンションの管理実務を担うために管理会社があります。ところが、管理に困っているマンションほど管理会社に断られ、マンション管理士へ相談する。しかし、マンション管理士は助言できても、毎月の入出金管理、業者対応、書類作成、居住者対応まで一人で継続することは困難です。
結果として、管理組合もマンション管理士も、実務を担う管理会社を探すことになります。
では、管理会社とは、そもそも何をする会社なのでしょうか。
そして、マンションを管理するための制度も専門家も存在するのに、なぜ管理不能に近いマンションが生まれるのでしょうか。
1.管理会社は「マンションのことを全部決める会社」ではない
マンション管理適正化法では、マンション管理業は、管理組合から委託を受けて管理事務を行う事業とされています。管理事務には、会計、出納、建物の維持修繕に関する企画や実施の調整などが含まれます。
一方、マンション管理士は、管理組合や区分所有者からの相談に応じ、専門的知識をもって助言、指導その他の援助を行う専門家です。
制度上の役割を単純化すれば、次のようになります。
管理組合は方針を決める。
マンション管理士は判断を支援する。
管理会社は契約した実務を継続して処理する。
この制度上の整理自体は間違っていません。
しかし、現場で問題になるのは、この三者の間にある仕事です。
例えば、マンション管理士が「滞納への対応が必要です」と助言しても、誰が滞納額を整理し、督促履歴を確認し、理事会資料を作り、弁護士へ渡す資料を準備するのでしょうか。
管理会社が「修繕積立金を値上げする必要があります」と提案しても、反対する区分所有者に対して、誰が必要性を説明し、複数案を比較し、総会で決められる状態まで議論を整理するのでしょうか。
制度は、資格や契約上の役割を定めています。
一方、現場運営では、問題を整理し、期限を定め、関係者を動かし、管理組合が決められる状態をつくる必要があります。
この「決められる状態をつくる仕事」が、どの契約にも明確に含まれていないことが少なくありません。
2.管理会社が存在しても、管理体制が存在するとは限らない
管理会社と契約していれば、管理体制があると思われがちです。
しかし、KTCが現場で確認するのは、管理会社の有無だけではありません。
次のようなことを見ます。
- 毎月の会計処理を誰が行っているか
- 未収金や未払金を誰が追跡しているか
- 設備の不具合を誰が把握しているか
- 理事会で決まったことを誰が実行しているか
- 未決事項を誰が次回の議題に戻しているか
- 理事長が交代しても情報が引き継がれるか
- 管理会社の契約外業務を誰が担っているか
- 専門家から受けた助言を誰が実務へ移すか
これらが整理されていなければ、管理会社がいても、実際には担当者や理事長個人の努力で持ちこたえているだけです。
担当者が変わる。理事長が退任する。長年担当していた会計役員が高齢になる。
その瞬間、それまで表面化していなかった問題が一斉に現れます。
これは、前任の理事長が怠けていたからとは限りません。
むしろ、責任感の強い理事長が、契約書に書かれていない仕事まで自分で処理した結果、管理組合全体が「何とかなっている」と思い込んでしまうことがあります。
個人の献身は、その時点では問題を解決します。しかし長期的には、問題の所在を見えにくくすることがあります。
KTCが目指すのは、優秀な理事長を探すことではありません。
普通の理事長が、限られた時間と知識でも運営できる体制をつくることです。
3.会計業務だけを引き受けても、管理組合を立て直せないことがある
KTCが関わった、戸数の少ない自主管理マンションの事例があります。特定を避けるため、一部を一般化します。
当初、KTCが受託していたのは会計業務でした。
管理費等の入金確認、支払い、会計資料の作成などを行っていましたが、理事会運営や滞納対応、居住者との連絡、修繕の判断は管理組合が行う契約でした。
ところが、次第に次のような問題が表面化しました。
滞納者が発生しても、誰がどこまで督促するのか決まっていない。理事長と連絡が取れない期間がある。役員のなり手がなく、理事会で決めるべきことが先送りされる。会計資料は作成されても、その数字を見て管理費の不足や未処理事項を判断する人がいない。
会計処理そのものは継続していました。
しかし、管理組合の運営は徐々に停滞を始めていました。
この経験から分かるのは、会計を外部委託すれば自主管理を継続できるとは限らないということです。
会計は重要ですが、会計は管理体制の一部分です。
数字を作る人がいても、その数字をもとに何を決めるか、決めたことを誰が実行するかが定まっていなければ、管理組合は動きません。
そこでKTCは、単に会計業務を追加するのではなく、まず次の点を整理しました。
- 管理組合内で決めなければならない事項
- KTCが契約上実行できる事項
- マンション管理士や弁護士などの判断が必要な事項
- 理事長個人に集中している業務
- 契約を変更しなければ引き受けられない業務
この整理をせず、困っているからという理由だけで管理会社が何でも対応すれば、業務範囲と責任が曖昧になります。
一時的には親切に見えても、担当者が変われば続きません。
KTCが考える管理体制の設計とは、管理組合の要望をすべて引き受けることではなく、誰が何を決め、誰が何を実行し、どこから専門家へつなぐかを明確にすることです。
4.管理会社が小規模で面倒なマンションを避けるのは悪いことか
管理会社側にも事情があります。
戸数が少なくても、理事会資料、総会資料、月次会計、設備対応、苦情対応などの基本業務が、戸数に比例して小さくなるわけではありません。
20戸のマンションだから、100戸のマンションの5分の1の労力で管理できるとは限らないのです。
さらに、長年の未処理事項、滞納、住民間の対立、資料不足などがあれば、受託直後には通常管理とは別の整理作業が必要です。
採算が取れず、事故の可能性も高いマンションを無条件に受託することが、管理会社の社会的責任だとは言い切れません。
無理に受託すれば、担当者が多数の物件を抱え、連絡が遅れ、理事会資料が定型化し、結果として管理組合に迷惑をかけることもあります。
したがって、管理会社が受託条件を設けること自体を否定するつもりはありません。
ただし、ここには管理会社側が向き合うべき問題もあります。
従来、多くの管理会社は、会計、管理員、清掃、設備、理事会支援などをまとめた一括管理を標準商品としてきました。
その標準商品に合わないマンションに対して、「受託する」か「断る」かの二択しか示さないのであれば、マンション管理業界は、管理に困っているマンションの需要に応えられていないことになります。
会社として効率化を進めることと、社会から必要とされるサービスを設計することは、両立させなければなりません。
小規模マンションを赤字で何でも引き受けるべきだという話ではありません。
一括管理が無理なら、会計、巡回、理事会支援、設備対応などを分け、必要な部分を組み合わせられないか。
受託前の整理業務と、受託後の通常業務を分けて費用を提示できないか。
管理会社単独では対応できないなら、マンション管理士や建築士と連携できないか。
管理会社側にも、標準商品にマンションを合わせるだけでなく、現場に合わせて管理体制を組み直す努力が求められます。
5.専門家を増やせば解決するわけでもない
管理会社に不安があるから、マンション管理士を入れる。
工事金額に不安があるから、設計コンサルタントを入れる。
専門家による確認は、管理組合の判断を助けます。
しかし、第三者を入れれば必ず適正になるわけではありません。
マンション管理士が問題点を指摘しても、日常業務の実行者がいなければ改善は進みません。
設計コンサルタントが仕様書を作成しても、管理組合が工事範囲や予算を決められなければ、施工会社は選べません。
また、管理会社、マンション管理士、建築士がそれぞれ別の意見を出した場合、管理組合はかえって判断に困ることがあります。
外部の専門家が管理者に就任する方式も選択肢の一つですが、国土交通省は、利益相反、契約関係、財産管理、監査、情報開示などに留意する必要があるとして、外部管理者方式に関するガイドラインを2026年4月1日に改訂しています。
つまり、専門家へ任せる場合にも、「誰に何を任せ、誰が確認するか」という統制が必要です。
選択肢は、一社への全面委託だけではありません。
- 一つの管理会社へ一括委託する
- 会計や出納など一部だけを委託する
- 管理会社とマンション管理士が分担する
- 建物分野だけ建築士へ依頼する
- 外部の専門家を管理者に選任する
- 管理組合内の役割を整理して自主管理を続ける
- 一定期間だけ立て直し支援を受け、その後通常管理へ移る
どの方式にも、メリットと限界があります。
重要なのは、方式の名称ではなく、そのマンションで実際に必要な仕事が抜け落ちていないかです。
6.KTCが考える「オーダーメイド管理」とは
オーダーメイドという言葉は、管理組合の要望に合わせて何でも対応することだと誤解されることがあります。
KTCが考えるオーダーメイド管理は、そうではありません。
まず、現在の管理業務を分解します。
次に、通常業務と、過去の問題を整理するための業務を分けます。
さらに、管理組合が決める事項、管理会社が実行する事項、マンション管理士や建築士に判断を求める事項を分けます。
そのうえで、情報と意思決定の流れを設計します。
例えば、マンション管理士が規約上の問題を整理し、KTCが理事会資料へ反映する。理事会で決めた内容をKTCが業者へ伝え、進捗を次回理事会へ報告する。建物の技術的判断が必要な場合は建築士へつなぎ、その意見を管理組合が比較できる形にまとめる。
専門家を紹介して終わるのでも、管理会社がすべてを抱え込むのでもありません。
専門家の意見を管理組合の意思決定につなぎ、決定されたことを実務へ戻す仕組みをつくります。
KTCが提供したいのは、特定の担当者が頑張る管理ではなく、担当者や理事長が交代しても続く管理です。
7.管理会社を探す前に、管理組合が確認すべきこと
管理会社に断られた場合、次の会社へ同じ見積依頼書を送る前に、まず次のことを確認してください。
現在、誰が何をしているか。
理事長、会計担当者、管理員、管理会社、専門家の仕事を一覧にします。契約書に書かれていない仕事も含めて確認します。
何が通常業務で、何が過去から残った整理業務か。
滞納整理、資料の復元、未処理工事、住民間の対立などは、通常の管理委託費だけでは対応できないことがあります。
何を管理会社に決めてもらおうとしているか。
管理会社は提案や実務支援はできますが、管理組合に代わってすべてを決める会社ではありません。
専門家の助言を誰が実行へ移すか。
マンション管理士や建築士へ相談する場合、報告書を受け取った後の担当者と期限まで決めておく必要があります。
現在の管理費で、必要な管理を継続できるか。
安い管理委託費で受託する会社を探すだけでは、担当者の過重負担や工事収益への依存など、別の問題が生じる可能性があります。
管理会社とは、単に人員や作業を提供する会社ではありません。
管理組合の決定を、会計、契約、建物管理、専門家との連携といった継続的な実務へ変換する会社です。
管理会社だけですべてを解決できるとは限りません。しかし、マンション管理士などの専門家だけでも、日常の管理は動きません。
必要なのは、「管理会社かマンション管理士か」という二択ではありません。
管理組合が担う意思決定、管理会社が担う実務、専門家が担う助言を分け、それらが途切れずにつながる管理体制です。
KTCでは、小規模マンションや自主管理マンションについては、まず現在の業務と未処理事項を整理し、管理組合と専門家が無理なく連携できる体制を検討します。
管理会社が見つからない場合には、会社探しを続ける前に、「このマンションでは、誰が、何を、どこまで担う必要があるのか」を確認することが、立て直しの第一歩になります。

