管理会社との契約終了までに、次の管理会社が決まらない――管理組合が今すぐ確認すべきこと
「今の管理会社の対応が悪い。そろそろ管理会社の変更を考えた方がよいのではないか」
理事会で、そのような意見が出始めた。
何人かの役員も賛成している。そこで、他の管理会社に見積りを依頼するなど、変更に向けた検討を始めた。
ところが、ある日突然、現管理会社から「次回の管理委託契約は更新しません」と通知された。
管理組合が変更を検討していることを管理会社が知り、それが契約を更新しない判断につながったのではないか。理事長は、そう思いました。
実際の理由は、管理会社の採算上の問題かもしれませんし、管理組合との信頼関係の問題かもしれません。
しかし、管理組合からすれば、まだ管理会社を変更することさえ決めていなかったのです。
慌てて後継会社を探し始めたものの、なかなか見つからない。そうこうするうちに、契約終了日が近づいてくる。
このような状況になれば、理事長が不安になるのも当然です。
ここで、お伝えしたいことがあります。
次の管理会社が決まらないことと、マンションの管理が続けられなくなることは、同じではありません。
管理会社との契約が終了しても、管理組合がなくなるわけではありません。
大切なのは、後継会社探しと並行して、契約終了後も必要な管理業務を継続できる状態にしておくことです。
今回は、管理会社との契約終了が迫ったとき、何を優先して確認するべきか、実務の視点から考えます。
1.管理会社変更に賛成していた役員が、突然反対に回ることがある
まず、管理会社変更を進めるうえで、避けて通れない問題があります。
管理組合内部の意思確認です。
管理組合では、管理会社に対する不満を持っている人が多くても、実際に変更するとなると、必ずしも同じ意見になるとは限りません。
例えば、理事会で管理会社変更の検討を始めたところ、多くの役員が賛成したとします。
ところが、現管理会社から契約を更新しないという通知が届き、後継会社もなかなか見つからない。
すると、それまで賛成していた役員から、次のような意見が出てくることがあります。
「そこまでして管理会社を変更する必要があるのか」
「今の管理会社にお願いして、続けてもらった方がよいのではないか」
「理事長が管理会社と対立したからではないか」
理事長からすれば、今まで一緒に進めてきたはずなのに、いざ問題が起きると自分だけが責任を問われる。
そのように感じても不思議ではありません。
ただ、役員の側にも事情はあることでしょう。
管理会社への不満には賛成していても、管理会社がいなくなることまで想定していなかった。
つまり、管理会社への不満を共有していることと、変更に伴うリスクを共有していることは別だったのかもしれません。
そのため、管理会社変更を検討する際には、単に賛成か反対かを確認するだけでは不十分です。
後継会社が見つからなかった場合はどうするのか。委託費が高くなった場合はどうするのか。変更を取りやめる余地は残すのか。
そうした問題を、理事会として事前に話し合っておく必要があります。
もっとも、今回のように、すでに管理会社から契約終了を通知されている場合は事情が異なります。
管理会社変更への賛否がまとまるまで、引継ぎ準備を待つわけにもいきません。
管理会社を変更するかどうかという判断と、契約終了に備える仕事は、分けて進めるべきです。
たとえ最終的に現管理会社との契約継続を希望するとしても、契約が更新される保証がなければ、引継ぎの準備は必要になります。
2.契約終了の通知が届いたら、まず契約書を確認する
管理会社から契約を更新しないという通知が届いたとき、最初に確認するのは管理委託契約書です。
特に確認しておきたいのは、契約期間、更新手続き、解約の申入れ、契約終了時の引継ぎに関する規定です。
ここでは、「契約を更新しないこと」と「契約期間中に解約すること」を区別してください。
国土交通省のマンション標準管理委託契約書には、契約の更新や管理事務の引継ぎについて規定があります。
また、更新協議がまとまらない場合、双方が合意すれば暫定契約を締結できる仕組みも設けられています。
ただし、標準管理委託契約書はあくまでひな形です。実際の契約内容が優先されるため、個々の契約書を確認する必要があります。
もう一つが、現管理会社が契約終了までに何を引き継ぐことになっているか、という点です。
管理会社が契約を更新しないことと、現在管理している資料や管理事務の引継ぎに対応しなくてよいことは、まったく別問題です。
そこで、現管理会社に対して、引継ぎ対象となる書類、会計資料、未処理案件の一覧、引継ぎ予定日を確認してください。
できれば、口頭だけでなく書面で確認してください。
また、後継会社が決まらない場合には、現管理会社との暫定契約を検討する余地もあります。
ただし、契約を延長してもらうことを前提にせず、延長できなかった場合の準備も並行して進めておく必要があります。
管理会社との交渉が難しくなっているときほど、感情的な対立と、実務上必要な引継ぎを切り離すことが重要です。
3.後継会社が決まらないと、翌月から何が困るのか
ここからが、契約終了に備えた具体的な準備です。
私たちが、小規模マンションの管理や会計業務を考える際に重視しているのは、単に業務の種類を並べることではありません。
その業務が止まったとき、実際に何が起きるのか、ということです。
例えば、11月末で管理委託契約が終了する20戸のマンションを考えてみましょう。
12月になっても後継会社は決まっていません。
この場合、まず最初に困るのは、管理費や修繕積立金の収納、そして業者への支払いです。
現在、管理費等の口座振替を管理会社側の仕組みで行っている場合、12月以降の収納がどのようになるのかを確認しなければなりません。
口座振替は、新しい事業者が決まれば翌日から切り替えられるわけではありません。
金融機関や収納代行会社の手続きによって、準備に相応の期間が必要です。
それでは、当面は各組合員に銀行振込みをお願いすればよいのでしょうか。
それも一つの方法です。
しかし、その場合には振込先の案内、入金確認、未納者への連絡を誰が担当するのか決めなければなりません。
また、振込手数料の負担についても検討が必要です。
次に、支払いです。
電気料金、水道料金、エレベーター保守費、清掃費など、管理組合の支払いは続きます。
銀行口座に十分な預金があっても、振込みを行う人がいなければ支払いはできません。
現在、管理会社が支払伝票を作成し、理事長の承認を受けているのであれば、その業務を誰が代わりに行うのか。
さらに、請求書は今後どこに届くのか。
管理会社に届いていた請求書が、そのまま旧管理会社へ送り続けられることも考えられます。
こうした問題を考えると、確認すべきなのは預金残高だけではありません。
収納方法、請求先、支払方法、承認者、支払期日まで確認する必要があります。
なお、管理組合の預金口座については、管理会社による財産の分別管理に関する法令上の規制があります。通帳や印鑑の保管方法も、口座の種類や契約内容によって異なります。
単純に通帳と印鑑を理事長が受け取れば解決する、というものではありません。
銀行届出事項、振込権限、インターネットバンキングの利用権限なども含め、管理組合自身が資金を適切に管理できる状態にすることが必要です。
4.契約終了までに確保しておきたいのは、管理組合の財産と情報
次に重要なのが、管理組合の財産と資料です。
長年同じ管理会社に委託しているマンションでは、管理組合自身が、何の書類をどこに保管しているのか把握していないことがあります。
ここで確認する書類は、大きく分けて三つあります。
第一は、お金に関する書類です。
預金口座に関する情報、会計帳簿、残高明細、収支報告書、未収金・未払金一覧、組合員ごとの請求・入金状況などです。
特に会計業務では、月次報告書だけを受け取っても、次の会計処理は継続できません。
例えば、未収金が10万円あるということは分かっても、誰の何月分が未納なのか分からなければ、督促を行うことができません。
会計データについては、電子データで引き継げるのか、どのような形式で提供されるのかも確認しておきたいところです。
第二は、管理組合の運営に関する書類です。
管理規約、総会議事録、理事会議事録、組合員名簿、駐車場使用契約書、各種業者との契約書などです。
ここで注意したいのが組合員名簿です。
区分所有者と居住者が異なる場合、連絡先や請求先が違うこともあります。
また、個人情報を含むため、引継ぎ後の保管方法や閲覧できる人の範囲にも配慮しなければなりません。
第三は、建物と設備に関する書類です。
竣工図面、建築確認済証、検査済証、消防設備等の点検報告書、設備保守契約書、修繕履歴、長期修繕計画、工事保証書などです。
古いマンションでは、こうした書類がすべて残っているとは限りません。
また、管理会社も保有していない書類だと、直ちに提出することはできないでしょう。
そこで、最初からすべてを揃えることにこだわるのではなく、存在する資料と所在不明の資料を分けて確認することが現実的です。
また、資料を引き渡すことと、管理事務を引き継ぐことは同じではありません。
例えば、漏水事故の対応中であれば、工事会社の見積書があるだけでは不十分です。
誰がどこまで対応し、何が未解決なのか。
工事を発注済みなのか。費用負担について問題が残っていないか。
そのような途中経過まで引き継がなければ、次の担当者は最初から調査をやり直すことになります。
KTCでは、こうした未処理案件の引継ぎも、書類の引渡しと同じくらい重要だと考えています。
5.管理会社との契約が終わっても、すべての業務が止まるわけではない
管理会社との契約終了に際して、もう一つ確認しておきたいことがあります。
それは、専門業者との契約関係です。
例えば、エレベーター保守、消防設備点検、貯水槽清掃、日常清掃などです。
これらの業務は、管理組合が専門業者と直接契約している場合もあれば、管理会社が専門業者に再委託している場合もあります。
直接契約であれば、管理会社との契約が終了しても、専門業者との契約は原則として別に継続します。
一方、管理会社が契約当事者となっている場合は、管理会社との契約終了に伴って、専門業者との契約関係を整理する必要があります。
ここで、後継の管理会社が見つからないからといって、すべての専門業者を変更する必要はありません。
現在の専門業者と管理組合が直接契約できる場合もあります。
もちろん、契約条件や費用が変わる可能性はありますし、管理会社が行っていた業者間の連絡調整を誰が担当するのか、という問題も残ります。
それでも、専門業者との関係を維持できれば、管理組合が一から業者を探す手間を減らせます。
中でも注意したいのは、緊急対応です。
漏水事故や設備故障が発生したとき、誰に連絡すればよいのか。
管理会社の緊急受付窓口が利用できなくなるのであれば、その代替連絡先を決めなければなりません。
また、設備の鍵、機械室への立入り方法、警備会社の連絡先など、実際の現場対応に必要な情報も確認しておきます。
管理会社がいなくなっても、専門業者がすぐに使えなくなるとは限りません。
むしろ、既存の契約と現場の仕組みを活用できないかを先に確認する方が、管理組合の負担を抑えられることがあります。
6.後継会社が見つからなければ、管理業務を一時的に分ける方法もある
契約終了までに後継会社が決まらなかった場合、考えられる方法はいくつかあります。
まずは、現管理会社との暫定契約です。
全面的な契約継続が難しい場合でも、一定期間に限って会計業務など一部の業務だけを継続してもらえないか、交渉する余地はあります。
ただし、相手方が合意しなければ成立しません。
次に、業務を分けて委託する方法です。
会計は会計業務を受託する事業者に委託する。
清掃は清掃会社に直接依頼する。
設備点検は専門業者との契約を継続する。
そして、理事会運営については、当面、役員が中心となって対応する。
このような方法です。
ただし、ここで誤解していただきたくないことがあります。
業務を分けて委託したからといって、管理会社が行っていた仕事がすべて代替できるわけではありません。
例えば、清掃員が設備の不具合を発見したとします。
その報告を誰が受けるのか。
修繕が必要かどうか、誰が確認するのか。
見積りを取得して、誰が理事会に提出するのか。
そして、修繕するかどうかを誰が決めるのか。
管理会社が担っていた連絡調整の仕事は、そのまま残ります。
小規模マンションでは、こうした仕事が結果的に理事長へ集中することがあります。
特に高齢化が進み、役員のなり手も不足している管理組合では、このような部分委託が適切とも限りません。
だからこそ、暫定的な管理体制を検討する際には、誰が作業をするかだけでなく、誰が報告を受け、誰が判断のための資料を揃えるのかまで決めておく必要があります。
外部のマンション管理士などに、一定期間の運営支援を依頼する方法も考えられます。
ただし、どの方法を選ぶにしても、暫定的な対応はあくまで暫定的な対応です。
一時的に運営できることと、その体制を継続できることは別に考える必要があります。
7.今すぐ確認すること――管理会社が決まらなくても、管理組合の仕事は続けられる
管理会社との契約終了が迫っていても、必要以上に慌てることはありません。
ただし、何もしなくても大丈夫というわけではありません。
大切なのは、後継会社を探すことだけに時間を使わず、契約終了日までに管理組合自身が確保しておくべきものを確認することです。
最初の理事会では、次の五つを確認してみてください。
- 契約終了日と引継ぎの条件
契約書の内容を確認し、現管理会社との引継ぎ日程を決める。 - 翌月の収納と支払い
管理費等をどのように集め、業者への支払いを誰が行うのか確認する。 - 管理組合の財産と資料
預金、会計資料、組合員名簿、契約書、建物関係書類などの所在と引継ぎ方法を確認する。 - 設備管理と緊急対応
専門業者との契約関係を確認し、契約終了後の連絡先を確保する。 - 未処理案件と暫定的な管理体制
対応中の修繕や未解決事項を洗い出し、後継会社が決まるまで誰が対応するのか決める。
この五つについて、確認する担当者と期限を決めておけば、理事長一人がすべてを抱え込まず、理事会として対応できます。
また、契約終了が目前に迫っている場合には、優先順位をつけなければなりません。
まずはお金の出入りを止めないこと。
建物の安全管理を継続すること。
そして、管理組合の財産と必要な情報を確保すること。
これらが確認できれば、後継会社の選定について、一定の時間を確保できます。
管理会社を変更することが目的ではありません。
今の管理会社に契約を継続してもらうことが唯一の解決策でもありません。
管理会社が変わるとしても、後継会社がしばらく決まらないとしても、管理組合として必要な管理を維持できる状態にする。
それが、契約終了を前にした管理組合が、まず取り組むべきことです。
株式会社関西建物センター(KTC)では、小規模マンションや自主管理マンションの管理業務、会計業務、管理体制の見直しなどに対応しています。
管理会社との契約終了が迫っている場合も、後継会社を探すことだけでなく、当面どの業務を継続し、何を引き継ぐ必要があるのかという段階からご相談いただけます。

